今後NHKはどうなるの?---NHK集金人との会話から---

 先月の1月24日、籾井勝人氏が任期満了によりNHK会長を退任した。就任会見から口が災いし、あるときはハイヤーが災いし、職員の不祥事が災いし、国会での予算承認が3年連続で全会不一致になるなど、話題提供には事欠かない人物だった。しかし、氏の退任に寂しさを感じている暇はない。このところNHKが連日ニュースを騒がせているからだ。

 検討されていた受信料値下げが流れるわ、着服やらタクシー券不正使用が発覚するわ、今月に入っても記者が強姦致傷と住居侵入の容疑で逮捕されるわ、10日には放送倫理・番組向上機構から勧告を受けるわ、16日には“文春砲”まで炸裂し『「NHKの大罪」スペシャル』と題して徴収員が受信料詐欺を告白するわと、もうしっちゃかめっちゃかである。

 この状況、同様に不祥事が相次いだ2004年頃を思い出さずにいられない。当時の海老沢勝二会長が衆議院に参考人招致されるに至るが、これがNHKで生中継されず、火に油を注ぐこととなり、最終的に海老沢氏は辞任。不祥事が不祥事を呼んだ影響は大きく、これ以降、翌2005年9月末までの間に不祥事を理由にした受信料の支払い拒否・保留が130万件に達するという、未曽有の事態に発展した。

 海老沢氏から会長職を引き継いだ橋本元一氏は、「受信料不払いの理由は、当初の不祥事へのお怒りから、次第にお隣も払っていないから私も払いたくない。払わなくて済むのだったら払わないという方が増えております」と発言。結局、受信料収入は2004年の6410億円から6024億円へと約400億円も落ち込んだ。





 さて、このときの不払い急増を境に、受信料を払っていない視聴者に対し、法的手段を講じることにしたり、受信料の契約・収納業務を外部委託したりと、より積極的な動きを取り始めたNHK。実際のところ、支払い率はどうなっているのだろう。

 2012年に初めて公表された受信料の都道府県別世帯支払い率を見てみると、都道府県によって大きなばらつきがあることがわかる。最高は秋田県の94.6%。最低は沖縄県の42.0%。そして全国平均は72.5%。

 この調査の最新版(上の表)は昨年5月に発表されており、全国平均は過去最高の76.6%。首位は相変わらずの秋田で97.6%。5冠達成である。そして沖縄は48.4%とやはり最下位なのだが、昨年度の結果と比較しても、沖縄含め47都道府県すべてで支払い率は上昇。受信料に対する不満は特にネット上では多く見られるが、NHKのこれまでの活動が実を結んできたようだ。ちなみに、沖縄の支払い率の低さは、こういうことらしい。

〈1972年に施政権が日本に返還される前の沖縄では受信料を財源とする公共放送の設立は民放より遅く、「放送五十年史」(NHK編)に「商業放送が先にできていたところに、公共放送として受信料をとることになったため、普及の苦労はたいへんだった」と記述されているように、「テレビは無料」との市民感覚が現在まで続いているものとみられる。〉(NHK出版『放送研究と調査』2012年11月号)

 沖縄の他には大都市を擁する地域の支払い率の低さが目立つ。人の移動が多く、把握が困難だからと分析するNHKだが、民放の数や娯楽の選択肢の多寡も影響している気がする。しかしこうして見ると、人口が多いぶん、大都市での頑張り次第では、結構な増収を見込めるということのようだ。今回の不祥事ラッシュがこれにどう影響するか、気になるところだ。





先週筆者が体験した私的な出来事をお話ししたい。友人の引っ越しを手伝ったのだが、夕方には友人宅でそのまま打ち上げになだれ込むことになった。新居はマンションの1階で2K。他の部屋が物で溢れ返っているために、玄関を開けてすぐの3畳ほどのキッチンに無理矢理こたつを出して、4人で鍋をすることに。ぎゅうぎゅうの空間、男4人で大河ドラマ『真田丸』を見ながら白菜が煮えるのを待っていたとき、“彼”はやってきた。

 玄関のチャイムが鳴り、友人が「はいー?」と言いながら、来訪者の確認なしにドアを開けた(不用心である)。果たして、訪問者はNHKの集金人だった。正確に言うと、NHKから委託を受けている業者であった。「NHKの契約はお済みですか」「いや、テレビ持ってないんで」――。業者の眼前にはすし詰めで鍋を囲む男たち。そして画面に大写しになった草刈正雄が「大博打の始まりじゃー!」と叫ぶ。

 一瞬の間があり、「え、見てますよね。『真田丸』ですよね。NHKの。大河の」と疑問をぶつけてくる業者。「NHKの」くらいから、明らかに口調がイラついている。そしてそこから20分ほど、友人と業者の小競り合いが続くことになったのだが、結論から言うと友人は契約せず、業者は手ぶらで帰っていった。なぜか。

 まず、このとき我々が見ていたのは「テレビ」ではなく「パソコンのモニタ」であり、「放送」ではなく「レンタルDVD」であった。業者が不信感に満ちた眼差しを向けてくるので、DVDドライブからDVDを取り出し見せる友人。さらにテレビではないということを示すために、モニタを玄関まで持っていき、B-CASカードの差し込み口もアンテナの差し込み口もないことを確認させる。

 いや、引っ越しを手伝った我々は、友人がテレビを持っていないことを身をもって知っているし、そもそも今日は平日だし、夜8時じゃないし、『真田丸』はとっくに完結している。

 さて、再び業者のターン。「アンドロイドのスマホお持ちですか」。友人が「はい」と答えると、「じゃあワンセグが見れるので、契約が必要です」と返す。「え、ワンセグ見れないと思いますよ」「いや、見れるはずです」「えー?」。

 友人が応対している間に鍋の第一陣はすでに食い尽くされ、新たに具材が投入された。「アプリの一覧を見ても、ワンセグとかないですけど、このスマホ」「ちょっと貸してもらってもいいですか」「はい、どうぞ」「(無言でスマホをいじる業者)」「ありますか」「ちょっとわからないですね」。

 我々一同、「わからないんかい」と心の中でツッコミ。友人がメーカーのサイトと、アマゾンの商品レビューで、そのスマホにワンセグ機能がついていないことを確認する間、『真田丸』も見れないし、鍋も煮えていないので、私は業者に色々聞いてみることにした。以下、そのやりとりをQ&A方式で再現する。

Q 今日引っ越したばっかりなのに、なんでわかったの?

A 管理業者がドアノブにつけているキーボックス(部屋の内見に使う鍵を入れておく)がなくなっていて、電気がついていたから。

Q このマンションはオートロックがないけど、オートロックがある物件はどうやって訪問するの?

A 訪問できない。入れないから。それに高い物件に入ってる人は遅くまで帰ってこない。うちは夜間は訪問できないと決まっているので会えない。

Q 外が冷えてきたし、部屋の中、入ってもらってもいいんじゃないですかね。僕らも寒いので。

A 絶対に家の中に入ることはできない。

Q この近所って、どのくらいの人が受信料払ってるんすか。

A 8割くらいです。

Q 結構多いな! 「払いたくない」って人、もっといるかと思ってた。

A 中にはそういう人もいる。さっきは放送内容が気に食わないと言われて門前払い。しかし、ワンセグであっても、受信設備を持っていたら受信料は払ってもらわないといけない。

Q 去年、ワンセグの裁判で……。

A まだ裁判は続いていて、私たちは払ってもらわないといけないという考えです。

Q あの、やっぱり友人のスマホ、ワンセグ見れないみたいなんですけど。

A そういうスマホがあるというのは初めて知った。

 え。まあいいや。友人にかけられた嫌疑も晴れたし、いい加減、玄関から入ってくる外気に場が冷え始めていたので、業者とはさようならと相成った。

 ところで、友人宅は東京都内の住宅密集地で、オートロックの物件も多い。昨年発表の都道府県別推計世帯支払い率を見てみると、東京都は64.2%。友人宅の周辺住民、よっぽどの支払い優等生、という解釈でいいのだろうか。本当に? 

 報道される不祥事を抜きにしても、契約・収納のトラブルでいずれ大変なことにならないか心配である。……NHK、大丈夫ですかね。

引用元
NHK集金人と議論して感じた「受信料収入は大丈夫か?」


この記事へのコメント

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/447509055
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック