理系のほうが文系より将来安心というのは間違い?

 三田紀房『エンゼルバンク-ドラゴン桜外伝-』主人公のモデルにもなった海老原嗣生が語る。

 理系は文系と違って、確固たる専門知識があるから、将来にわたって仕事の不安がない。よくこんな話を親御さんたちが話しているが、それは間違いだ。

 理系は、はやりすたりが激しい。選んだ技術が使えなくなることが多々あるのだ。少し過去を振り返ってみよう。

 1950年代の学生の人気企業は「三白」といわれた。砂糖、紙、セメント業界のことである。
 その後は石炭や造船熱が高まり、70年ごろからは鉄鋼や自動車、家電に人気が移る。
 80年代以降は、IT(情報技術)ハードやAV系、90年を過ぎるとITソフトやゲーム、昨今ではWebや人工知能(AI)と人気企業はくるくる変わる。

 こんな感じだから、今の学生が65歳を迎える40年後は、まったく別の世界になっているだろう。




 さて、では理系人材のキャリアは、どのようなものになるか。

 まず、メーカーでは理系の採用者が文系の3~5倍にもなる。少数の文系人材は、本社勤務のエリートとして育てられる。
 一方、大量に入社する理系が、研究所勤務や新規開発に回れる可能性は極めて低い。多くは、工場に近い立ち位置で、最終設計や詳細設計に取り組む。

 比較的幅広い分野にまたがる基礎研究に携わるなら、メイン事業が変わっても生き残れる可能性は高いが、末端の最終設計となるとそうはいかない。

 だから事業衰退が起きると、他部署でひっそりと社会人の余生を送ることになる。その典型が、本社内勤への異動だ。その際は、理系知識があるということで、エンジニアの後輩指導として教育部などに移るケースが多い。

 次は、工場や設備に強いから総務、そして論理思考ができるからとシステム部、あとは生産管理や購買などとなる。もちろん、あとから続々と「理系卒業者」がやってくるので、そのたびに、玉突きでこうした部署をぐるぐる回ることになる。リストラ策が発表された暁には、彼らがその対象となるのは言うまでもない。

 現在なら、リストラされてもまださらに受け皿がある。それが、中国・韓国・台湾の企業だ。そうした企業に、年収アップで転職しているケースはままある。ただ、中韓台企業も追い上げが激しいので、こうした安全弁も早晩なくなっていくと思われる。

 これから先の学生にとって、理系は専門知識があるから安心とは、安易には言えない。そのあたりはしっかり考えておくべきだろう。


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