屋内全面禁煙にあなたは賛成?反対?

 日本では、昔は、電車、タクシーはもちろん、飛行機や病院の待合室でもたばこは吸えていた。

 在来線特急に初の禁煙車(エル特急「とき」)ができたのが1981年、禁煙タクシー第一号が出たのが1988年、JAL・ANAが全便禁煙にしたのは1999年のこと。

 世界では、世界保健機関(WHO)が1970年の総会においてたばこと健康に関する最初の決議が行われたことを契機に世界各国政府に対し積極的に喫煙規制対策をとるように勧告を行ってきた。1988年には「世界禁煙デー」も設けられている。

 「喫煙による健康への影響」や「受動喫煙による健康への影響」に関して、肺がんやその他の病気のリスクが高まると主張する派と、因果関係はないと主張する派に分かれてよく議論されている。

 国立がん研究センターは2016年8月、家庭や職場など人が集まる場所で周りが吸ったたばこの煙にさらされる受動喫煙がある人は、肺がんにかかるリスクが約1・3倍に高まるとする研究結果を発表した。同センターはこれまで受動喫煙が招く肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」としてきたが、科学的な裏付けがとれたとして「確実」に引き上げた。予防対策などに生かす。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの若尾文彦センター長は「日本の受動喫煙対策は世界の中で最低レベルにある。東京五輪を契機に屋内完全禁煙を実施する必要がある」と訴えた。

 研究グループは受動喫煙と肺がんの関連を示した426本の論文のなかから、1984年から2013年に発表された9本の論文を選び、たばこを吸わない人が受動喫煙によって肺がんになるリスクを分析した。
 その結果、受動喫煙のある人はない人より肺がんにかかるリスクが1・28倍だった。

 受動喫煙と肺がんの関係は80年代から指摘されていたが個別の研究では科学的な根拠が無く、リスクを高めるかどうかは確実とは言い切れなかった。

 しかし、複数の論文をそろえて分析したことで、受動喫煙が肺がんのリスクを高めることが確実となったわけだが、反対派(喫煙支持者)は今なお衰えを見せない。
 
 また2014年に、米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)が加熱式たばこ「アイコス」を販売し、「アイコス」ならどこで吸ってもよい(規制対象かどうかが明確ではなかったため)、健康に良い(根拠はないが出るのは水蒸気だから普通のタバコと違って体に害がない)、受動喫煙の危険性がない(根拠はないが出るのは水蒸気だから普通のタバコと違って体に害がない)ということから、一気に広まった。

 訪日外国人客が急増する2020年の東京五輪をにらんで、厚生労働省が2016年8月に屋内の全面禁煙を提言していたが、その規制の対象にアイコスなどの「電子加熱たばこ」も含まれることになった。

 たばこの問題には、単純にたばこ(の匂い)が好き・嫌いということだけでなく、喫煙や受動喫煙による健康問題、その因果関係が果たして正しいのか、吸いたい人間の権利と吸ってほしくない人間の権利、未成年者の喫煙問題、歩きたばこの危険性、たばこのポイ捨てによる景観・環境の悪化、外国人から日本がどう見られるか、など様々な要素が入り混じっており、議論している人間もすべてを一緒にして議論しているように見受けられる。

 最終的にタバコを吸うのは個人の自由だという結論を述べる人間も見かけるが、そういう人間は覚せい剤や大麻も合法にすべきだと思っているのだろうか?

 タバコと覚せい剤や大麻をまったく一緒のものと考えているわけではないが、酒が禁止されている国もあるように、個人の自由だけで済まされない問題もあるのではないか。

 日本のたばこ事情が今後どうなっていくのだろうか?




受動喫煙対策強化の一環としてプルーム・テックやアイコス(iQOS)などの「電子加熱たばこ」も“規制の対象となった。一般的には受動喫煙の危険性はないと目されていた電子加熱たばこがなぜ規制対象になったのか? そこには世界に対する日本のメンツが見え隠れする。

喫煙者にとっては厳しい内容かもしれない。厚労省が受動喫煙対策について新たな規制案を発表、プルーム・テックやアイコスなどの電子加熱たばこも規制対象に含めるとの考えを示した。受動喫煙への影響に対して、十分な知見が得られていないというのが理由だ。一旦規制対象とし、健康被害への影響がないと判明次第規制対象から外すとしている。

政府が受動喫煙対策に厳しく取り組むのにはワケがある。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックだ。日本の受動喫煙対策は世界に比べるとまだまだ遅れている。
WHOの調査によると、受動喫煙防止に関して日本の現状は世界最低レベルだという。

厚生労働省の『 [受動喫煙防止に関する国際的状況]』世界のによると、188か国中、公共の場所すべて(8種類)に屋内全面禁煙義務の法律があるのは49か国。日本は、屋内全面禁煙義務の法律がなく、世界最低レベルの分類だ。

日本も受動喫煙対策には以前から取り組んでいたものの、罰則も甘く徹底されていない状況だった。世界中から多くの人が訪れるオリンピックで恥をかくわけにはいかない。受動喫煙対策を世界レベルにしようと対策の強化に乗り出しているのだ。

2020年東京オリンピック・パラリンピックが決まり、厚労省が進めてきた受動喫煙対策の基本は喫煙できる施設の分類だ。施設の用途、施設の利用者から次の3つに分類している。

(1) 建物内禁煙
大勢の人が利用する施設で、他の施設を利用するのが容易ではない施設については「建物内禁煙」。官公庁や社会福祉施設などがこれにあたる。

(2) 敷地内禁煙
建物内禁煙のなかでも、特に未成年者や病人・患者が主に利用する施設は「敷地内禁煙」。学校や病院などがこれにあたる。

(3) 原則建物内禁煙
施設利用者に他の施設を選択する機会があり、娯楽性や嗜好性の強い施設は「原則建物内禁煙」。飲食店などがこれにあたり、煙が外に漏れないようにした喫煙室の設置を可能としている。

また1日に新たに発表した規制案では小・中・高校および医療施設は敷地内全体を禁煙。
ホテルや飲食店は原則建物内禁煙のうえで、バーやスナックなど規模の小さな店舗は喫煙を可としている。

こういった国の規制方針に対しては賛否両論ある。規制が甘いという意見では、喫煙を認める施設があること自体世界レベルではないという声がある。特に小規模店舗の喫煙を認める方針には厳しい見方だ。

日本禁煙学会は以下のような緊急声明を出している。

30平方メートル以下のキャバレー・バー・スナックなどを受動喫煙対策の例外とするとしています。これは、なし崩し的に法案を意味のないものとするだけではなく、IOCとWHOの協定に違反し、これをIOCが受け入れることは無いと思います。 (『健康増進法改正案の改悪についての日本禁煙学会緊急声明』より)




 一方で規制を厳しくし過ぎるとお客が来なくなりビジネスに影響するという声もある。

 全国8万以上の飲食業者が加盟する「全国飲食業生活衛生同業組合連合会(全飲連)」専務理事の小城哲郎氏がいう。
「店舗内を全面禁煙にしても、売り上げの落ち込みは一時的で、徐々に回復してくると指摘するデータがありますが、それは大手飲食店の話。われわれのように中小・零細の組合員が多く経営する飲食店は、売り上げが戻ってくるまで体力が続かず、廃業に追い込まれてしまう恐れがあります。
 店内がダメなら外で吸えばいいじゃないかという主張も今は通用しません。路上喫煙を禁止する自治体が多く、店の外に灰皿を置こうものなら周囲からのクレームも相当激しい。周囲の環境の心配もなく、敷地内にテラス席があるような飲食店ならいいのでしょうが、都内中心部でテラス席があるような飲食店はわずか数パーセントしかありません」

 では、完全分煙化の規制強化で先行する神奈川県の飲食業界は、売り上げの極端な減少が収まっているのか。「全国喫茶飲食生活衛生同業組合連合会」の副会長で、長年、神奈川の理事長も務めてきた八亀忠勝氏が話す。
「神奈川の条例ができて6年。20坪、30坪の小さな喫茶店で喫煙室をつくれない店の中には、完全禁煙にしてしまったところもありますが、やはり売り上げ的には決して満足していないと思います。
 そもそも喫茶店は駅の周辺に多く、通勤の行き帰りに寄ってコーヒーとたばこで一息つくのを日課にしているお客さんもたくさんいます。そうした常連客を一度失ってしまえば、再び戻ってはきませんよ。
 かといって、無理やり狭い喫煙室を設けたところで、『ちょっと待って、たばこ吸ってくるから』と席を立たなければならないような店のつくりなら、喫茶店での込み入った話も中断してしまう。われわれのような業態に禁煙もしくは完全分煙を強制するのは厳し過ぎます」

 厚労省案は小規模飲食店の“切り捨て策”に等しいと語気を荒げる八亀氏だが、大手チェーン店も今回の案を容認するつもりはない。約800の大手飲食業者を束ねる「日本フードサービス協会」の業務部部長、石井滋氏が語る。
「チェーン店でもテナント出店していれば、建物の大家さんとの関係もあるので、すべての店舗で喫煙室設置の排気工事ができるとは限りません。
 一律に法規制ができないなら、飲食店の店内はすべて禁煙にしてしまうのもひとつの手段であるかもしれませんが、喫煙者だって大事なお客様。たばこを吸える場を提供することも飲食業界の大事なサービスです。
 すでに組合員の自主的な受動喫煙防止対策として、喫煙・禁煙の店、分煙している店、時間帯によって禁煙・分煙を定めている店などが増えています。われわれも喫煙環境をはっきり表示する店頭ステッカーを配り、啓蒙活動に努めてきました。
 料理のメニューのように、お客様が店の喫煙環境を自由に選択できる仕組みづくり。国や行政にはそうした民間の取り組みこそサポートしていただきたいと思います」

 また、「東京都飲食業生活衛生同業組合」の常務理事、宇津野知之氏はこう訴える。
「日本だけ受動喫煙対策が遅れているといいますが、海外では屋内禁煙にするかわりに屋外に喫煙所や灰皿が多数設置され、自由にたばこが吸える国が多い。一方、日本は屋内だけでなく、屋外の禁煙指定区域も広がっています。
 海外の真似をして罰則付きの法規制をしさえすればいいというのではなく、日本特有の喫煙環境を後押しする対策がなぜ取れないのでしょうか。
 健康増進もいいですが、飲食店でリラックスしながらお酒やたばこを楽しむのもひとつの文化。喫煙が認められている以上、精神衛生の観点からもたばこ対策を論じなければ不公平だと思います」



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