人間は進化の過程でだまされやすいようになった?

国にかかわらず、「誰かが言ったおいしい話」に騙されるというのは人類共通のものなんですってね。

「ウソウソ。だって私、そんなにコロッと騙されないから」という人もいるかもしれませんが、たとえそんな人だって、心の底にはまちがいなく、「他者を信じたい、その結果として騙されてしまう」という心理を持っているのです。それを明らかにするのが、心理学の新潮流、進化心理学。

進化心理学では、人類誕生の100万年前から長い年月をかけて、「心のメカニズム」も進化を遂げたと考えます。
太古の時代には喜怒哀楽などのごく原始的な感情しか持たなかったのが、徐々に複雑な心のはたらきを備えていって現代に至ったとの仮説です。

その際に重視されたのが、「いかに生き残って遺伝子を次世代に残すか」ということ
。ダーウィンの唱えた身体の器官の進化でもそうですが、生物は、その時の置かれた環境にもっとも合わせて変化をしていかないと、生存の確率が低くなってしまいます。

心のメカニズムの同様で、間違った判断をしてしまうと生存の確率が少なくなり、次世代に遺伝子を遺せずに、その生物は絶滅してしまうのです。

では、時間を原始時代に巻き戻して、どのような心のメカニズムが当時を生き延びるのに有効だったか考えてみましょう。その時に注目すべきが、人類は誕生当初から群れを作っていたこと。それはある意味当たり前で、肉体的に劣っていた人類は1対1では猛獣に立ち向かうことも狩りをすることもできません。

群れを作りコミュニケーションを発展させ、役割分担などを上手にやることが人類繁栄の基礎なのですが、群れの中で上手に生活する際に必要な心のメカニズムとはどのようなものでしょうか?

それは「他者を信頼する」ということ。夜寝ている間にも、「この相手なら襲ってはこないだろう」、狩りをするときにも「コイツなら打ち合わせ通りに『おとり』の役割を果たしてくれる」など、他者に対する無条件の安心感が必要です。それも、家族を含めて自分の血族だけでなく、赤の他人すらも信頼できなければ、大きな群れを形成することはできません。

逆に、このような他者を信頼するという心を持たない人がいるとしたら、群れに溶け込むことができずに排斥されて、孤立してしまうことでしょう。現代ならば「孤高の存在」としてかっこつけていられるかもしれませんが、原始時代には孤立は死を意味します。そのようなタイプの人は進化の過程で次世代に遺伝子を遺せずに淘汰されてしまいますから、逆に言うと現代に生き残る私たちには、無意識のうちに人を信じるという心のメカニズムが形成されているのです。

先ほど出てきた「私、そんなにコロッと騙されないから」と言っている人も同様です。だって、考えてもみてください。

もし本当に他人を信用しないならば、スーパーで売られている食材を買うことも公共の交通機関を利用することもできないはず。「この食材には毒が混じっているのではないか」、「この飛行機のパイロットは操縦が下手に違いない」と疑ってかかって。

つまりは、現代社会に生きる私たちの心の奥底にも「他人のことを信頼する」という基本が横たわっているのです。


この記事へのコメント


この記事へのトラックバック