ファンドラップをしている人は手堅い?賢い?いえ、証券会社のカモですよ

「このなかに裏切り者がいる」――英国のサスペンス映画のようなセットで、渡辺謙扮する訳あり風の男が3人の仲間たちにこう語る。

「破天荒な生き方を誓った俺たちのなかに、『ファンドラップ』に手を出した奴がいる」

ざわつく仲間たち。

「ファンドラップ?」

「俺は手堅い生き方なんて考えたこともない」

「俺は貯金もない」

「俺もだ」

そこで渡辺謙が言う。

「俺も宵越しのカネは持たない」

「待てよ、宵越しのカネは持ってはいないが、預けているとしたら……」

薄暗い部屋でにわかに高まる緊張感……。ここで実は渡辺自身がファンドラップに手を出しているらしいとわかる。

「おい、だとしたらずいぶん賢いな」

渡辺の脇をかためる男たちも滝藤賢一、吹越満、橋本さとしと渋く通好みの配役。重厚ながらもユーモラスな大和証券のCMをテレビで目にして印象に残っている読者も多いだろう。

新聞の広告などでも、最近よく目にするようになった金融商品「ファンドラップ」。CMでは「手堅い商品」として描かれているが、その実態はどのようなものなのだろうか。

ファイナンシャル・プランナーでマネー講座「100ten.スクール」講師の蔭山あずさ氏が解説する。

「ラップというのは英語の『包む』という言葉からきています。通常の運用だと金融商品を売り買いするたびに手数料がかかってきますが、ラップ口座では投資顧問料・管理手数料として一まとめにラッピングされているので、このような名前がつきました。

ラップ口座というのは、まとまったおカネを預けて、人生設計や投資計画を相談した上で証券会社や信託銀行に運用を一任するという仕組みです。

一昔前は、最低でも数千万円単位の資金が必要な富裕層向けサービスでしたが、最近では数百万円から投資できるようになった。それが投資信託(ファンド)専門で運用を行うファンドラップです」

日本投資顧問業協会によると、ラップ口座全体の残高は'16年12月末で6兆4148億円。わずか5年前の'11年には1兆円にも満たなかったことを考えると、驚くべき急成長ぶりだ。その金額の大半が、ファンドラップである。

なぜこれほど急激に人気が出たのか。経済評論家の山崎元氏が解説する。

「これまでの証券会社は、顧客に頻繁に投資信託を売り買いさせて、その際に生じる手数料で儲けてきました。しかし、金融庁がそのような『乗り換え』手数料で儲ける仕組みを問題視した。

そこで、売買で手数料を取るのではなく、投資顧問料、口座管理料として定期的に手数料を生み出す新しい仕組みとしてセールスに注力しているのがファンドラップです。

今では大手の証券会社から信託銀行、ネット証券まで、あらゆる金融機関がファンドラップを売ろうとしています」

冒頭のような大掛かりなCMを連発してまで証券会社が売りたがる商品。果たしてそのファンドラップは、「儲かる金融商品」なのだろうか?

当然ながらすべての金融商品にはメリットとデメリットがある。まずはそのメリットから。

「これまでは証券会社の言われるがままに回転売買をして、手数料を法外に取られていたような人でも、ファンドラップであれば手数料の上限は決まっているので安心できる利点があります。

また、退職金や相続などでまとまったおカネを手に入れた人が、市場のことをよくわからないままに投資をして、財産を大きく目減りさせてしまうこともなくなります。

投資の初心者にとっては、自分にふさわしい資産配分を知るという意味でも、メリットがあります」(前出の蔭山氏)

大手の証券会社や信託銀行でファンドラップの口座を開くと、まず担当者と資産運用の計画を立てることになる。資産の何割をファンドラップで運用するのか。長期的に増やしたい資金なのか、あるいは5年後には取り崩す予定のある資金なのか。

どれくらいのリスクを許容できるか、目指す利回りはどれくらいが適当かといったことを相談しながら、最終的に顧客に最適な投資のポートフォリオを組んでいく。まさに運用の「オーダーメイド」といえる。

運用が始まってからも、定期的に運用担当者が経済情勢を鑑みて資産配分比率を見直す。なかには三菱UFJ信託銀行のファンドラップのように、利益確定(プロフィットロック)や損切り(ロスカット)を自動的に行ってくれるサービスもある。

顧客は面倒な取引からは解放されて、送られてくる運用報告書を眺めていればいいというわけだ。

「自分でETF(上場投資信託)を買う時間的な余裕がないとか、運用で時間を費やすくらいなら趣味などを充実させたいという人にはお勧めだと思います。運用コストはかかりますが、『時間を買う』と考えれば安いと感じる人もいるかもしれません」(ファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏)

ファンドラップをうまく利用すれば、世界の市場にバランスよく投資することができる。例えば、日本と米国の株式、日本の国債、先進国の国債を組み合わせて、リスクとリターンを調整することも可能だ。

「今は落ち着いていますが、今後トランプ政権下で世界の株式市場はますます活性化すると考えられます。

たとえば500万円の資産の半分を世界の株式市場に投資していて、世界の株式市場が20%値上がりしたとする。1年分の手数料約3%を差し引いたとしても、30万円以上の値上がりが期待できます」(証券会社社員)

もっとも、証券会社も営利企業である。客のためだけを考えて金融商品を作っているわけではない。顧客の人生のためにオーダーメイドで作られたかに見えるポートフォリオは同時に、証券会社が儲けるための仕組みに則って作られている。イデア・ファンド・コンサルティングの吉井崇裕氏が語る。

「たしかにファンドラップは、客に代わって適切な資産配分を作ってくれます。ただし、そのためのコストが高すぎるのが問題です。

例えば、野村のファンドラップ『プレミア・プログラム』は投資一任受任料が年率0.4104%、ファンドラップ手数料が1.296%かかり、加えて購入した投資信託の信託報酬に最大で1.35%(商品によって上下する)ほどかかります。

つまり、ラップ口座に預けている財産に対して毎年約3%のコストがかかってくる。これは資産配分を作って運用してもらうコストとしては高すぎます。

野村に限らず、大手証券、信託銀行の販売しているファンドラップは、ほぼ同じくらいの手数料・報酬を取られる。逆にいえば、毎年3%以上のパフォーマンスを上げられなければ、資産は目減りしていくことになる」

今の時代、資産運用で目指す利回りは2%からせいぜい5%。最初から3%も手数料を取られていては、複利で資産が大きくなる可能性は限りなく低くなる。

証券会社に払うカネはいくつかに分割できる。投資顧問料、管理手数料、そして投資信託の信託報酬だ。前者二つは運用を丸投げしているコストと考えてしまえば仕方ない面もあるが、問題は信託報酬である。

「たとえば、同じ国内株式に投資するとしても、ラップ口座を利用すると無駄に高い手数料の投資信託を組み入れられる可能性が高い。

外貨建ての金融商品であれば、売買する際の為替手数料も自社に入る仕組みになっている。そうやって見えにくいところでも手数料が取られている」(前出の山崎氏)

ラップ口座を開くと、基本的にその口座で買える投資信託は証券会社が運用しているものになる。だから信託報酬が高いからといって他の商品に乗り換えることはできない。

もし日経平均やダウ平均に連動するような商品がほしいなら、ファンドラップに頼らずに、そのような値動きをするETFを買うほうがよほどオトクだ。手数料が数分の一に抑えられるからだ。ETFは株と同じように取り引きできるので、買い方はいたって簡単だ。

先ほども述べたようにファンドラップは、金融庁が金融商品の「乗り換え」手数料稼ぎを問題視したことで大きく広がった。しかし、ここにきて金融庁はファンドラップ自体も問題視している。

「昨年9月の金融レポートで、金融庁は毎月分配型の投資信託、貯蓄型生命保険と並んで、ファンドラップを顧客のニーズに合わない金融商品としてやり玉に挙げている。それほど手数料が高いのです」(山崎氏)

楽天証券などのネット証券のなかには、1%程度の手数料だけしかとらないファンドラップも存在する。しかし、そもそもファンドラップを買いたいと思う人は、証券会社の担当者と対面で相談することに安心感を覚えるタイプだろう。

ネット証券でファンドラップを買うことができる人なら、最初から自分でポートフォリオを組んで、ネットで金融商品を買うはずだ。

冒頭のCMでは、ファンドラップを買う男は「手堅い生き方」をする男と見なされる。たしかに大損するリスクは少ないし、うまくすれば儲けも出るが、この商品でいちばん手堅く儲かるのが証券会社なのは間違いないようだ。

引用元
証券会社が宣伝しまくる「ファンドラップ」は本当にお得?


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